読売ジャイアンツ・阿部慎之助捕手、実は来年引退するつもりだった?!

現役最後の試合を終えた巨人阿部慎之助捕手(40)が日刊スポーツに手記を寄せた。

 

プロ入りした01年から19年間、球界の王道を歩んできた。
通算2000安打、400本塁打を達成。
球団史上最高の「強打の捕手」として君臨した。
厳しさ、優しさ、絶対的なリーダーシップで伝統球団をけん引し続けた。
原監督の通算1000勝のすべてに唯一、選手として立ち会った。
21世紀の始まりと同時に一時代を築き上げた「背番号10」が感謝の思いを記した。

 

もう、泣いていいですよね。
40歳にもなると涙もろくなる。
引退を決めた翌日。
最後まで泣かないと決めた。
勝負の半ばで涙はいらない。
最後の最後まで真剣勝負ができて最高でした。
ファンの皆さんにも本当に感謝しています。
現役生活、最後の手記にありったけの「ありがとう」を記したい。

球団を挙げて盛り上げてくれた本拠地最終戦の「ありがとう慎之助」の試合、クライマックスシリーズ、今回の日本シリーズを戦う中で、みんなの気持ちがすごく伝わってきた。
「1試合でも多く」「最後は勝って送り出したい」日本一には届かなかったけど、全力を出し切れたし、みんなの思いがうれしかった。

プロ1年目だった01年の開幕戦でスタメンマスクをかぶらせてもらった。
3日前からの39度の高熱が続いた。
実家の近くの診療所で夜通し点滴してもらった。
意識がもうろうとしていた。
緊張とか、そういうものを超越していた。
東京ドームのグラウンドに立ったときに身震いがした。
「勝つために」と言えば格好いい。
でも「負けないように」のほうが強かった。
常勝を義務づけられたチームというのは、捕手として負けちゃいけないと理解した。
自信なんか、これっぽっちもなかった。若いときは目の前の現実が怖かった。

恐怖をぬぐい去るためには人一倍、練習をするしかなかった。
試合前にたくさん言い訳を考えた。
試合後の言い訳は許されない。
だから、言い訳を試合が始まるまでに1つ、1つ、つぶしていった。
守備も攻撃も、頭と体で、負けないための準備をした。
ずっと野球のことばっかりを考えてきた。
プロとして当たり前だと思ってきた。

個人の記録は「現役を引退してから振り返ればいい」と言ってきた。
少しだけ今、振り返ってみると、2000安打も400号もチームに打たせてもらったんだと。
打った安打、本塁打より、捕手として打たれたほうがはるかに多い。
監督、コーチ、スタッフ、選手が「みんなで勝ちたい」という思いが1本の安打、1本の本塁打につながった。
打ったんじゃなくて、打たせてもらった。
ありがとう。

今季のリーグ優勝が決まった翌日の9月22日。
試合前の練習中に原監督に神宮球場のクラブハウスに呼ばれた。
「慎之助に対して考えていることを伝えたい」と、監督の希望、未来像を聞いたときに、すごくうれしかった。
こんなに考えてくれているんだと。
自分の考えとしては、来年できっぱり辞めようと考えていた。
でも、話を聞いて、その瞬間にすっと納得できた。
自分が気付いていないことに気付かせてもらった。
だから自分の意思として「今年で辞めます」と伝えさせてもらった。

ルーキー時代からずっと「背番号10」と寄り添ってきた。
プロ入り時に球団から提示されたのは「10」「22」「23」だった。
それまでは縁がなかった番号だけど、伝統球団の中で自分が育ててきたという自負もある。
洋服、アクセサリー、腕時計、今となれば身の回りに「10」があふれている。
愛着もある。
走る本数も1種目10本。
最近はおっさんになったから、2、3種目を足して10本かな。
今、球界は「10」が捕手の番号になりつつある。
少年野球とか高校野球とかでも、そうなってくれたらと、少しだけ楽しみにしている。

19年間の現役生活は長かった。
若いときのことなんか覚えていないことも多い。
それぐらいまでプレーできたということがうれしい。
「終わった」ではなく「次の挑戦が始まる」という気持ちが強い。
「まだ現役で出来ると」いう気持ちを今後の活力にしないといけない。
オムツを履いていたとき、父親の草野球に連れて行ってもらって野球に出会った。
それから、ずっと夢中でいられた。
一生の仲間もたくさんできた。

自分も父親になり、野球の練習で泥だけになった長男・成真(小2)の靴を洗っていて身に染みて実感した。
両親のおかげで野球を続けられたんだと。
最後に一番近くで応援してくれた家族、両親には感謝してもしきれない。

この先も野球人としてまっとうしたい。
ありったけの「ありがとう」の思いを込めて。
(巨人捕手)

 

◆阿部慎之助(あべ・しんのすけ)1979年(昭54)3月20日、千葉県浦安市生まれ。
安田学園-中大を経て、00年ドラフト1位で巨人入団。
01年に新人捕手で開幕戦に先発出場し、初打席初安打初打点。
04年4月、当時の日本記録に並ぶ月間16本塁打。
09年日本シリーズMVP。
12年は首位打者、打点王、最高出塁率に輝き、リーグMVP、正力賞。
17年に通算2000安打、今年6月には通算400本塁打を達成。
ベストナイン9度、ゴールデングラブ賞4度。
180センチ、97キロ。右投げ左打ち。