まもなく最終回を迎えるNHK朝ドラ「半分、青い。」は北川悦吏子氏の自伝?!


2018年度前期のNHK連続テレビ小説『半分、青い。』が、9月29日に最終回を迎える。

4月に放送が始まった『半分、青い。』は、ヒロイン・鈴愛(永野芽郁)の支離滅裂な言動や、思いつきで展開しているかのような目まぐるしいストーリー、さらには脚本を担当する北川悦吏子氏のTwitter上での暴走ぶりなどが、ネット上で物議をかもしてきた。
評判そのものは決して良いとはいえないが、それも含めて注目を集めたのは事実で、平均視聴率は20%前後を推移。
制作のNHKも北川氏も、この数字をもって「成功した」と捉えるだろう。

北川悦吏子氏のオリジナル脚本による『半分、青い。』は、1971年生まれのヒロイン・鈴愛が高度経済成長期の終わりから現代までを駆け抜けるという、半世紀の物語。
鈴愛のモデルはいないはずだが、あえて言うなら北川氏自身が鈴愛そのものだったのだろう。
舞台は彼女の出身地である岐阜、そして東京。
鈴愛の年齢は北川氏より10歳若いが、享受してきた日本のカルチャーは重なる。
何より、一部の視聴者が紛糾した鈴愛の破天荒な言動を、北川氏は破綻しているとは捉えず、「鈴愛ならばこうする」と確信を持って描いていたようだ。

しかし北川氏が脚本家として名声を得たのとは違い、鈴愛は漫画家として大成しなかった。
朝ドラといえば、ヒロインといえば浮き沈みを経験しながらも何らかの天職を全うし、その傍らで運命の相手と紆余曲折ありつつも結婚して夫婦になる、というパターンが多いものだが、鈴愛の半生は挫折の繰り返しだ。

家族や友人に囲まれのびのび暮らし、同じ日に生まれた幼なじみの律(佐藤健)とは恋愛ではないがいかにも特別な関係、高校卒業後は漫画家を目指して上京――と、ここまではいわゆる朝ドラ路線通りだった。
鈴愛はきっと偉大な漫画家・秋風羽織(豊川悦司)にしごかれながら漫画家として才能を開花させ、遠距離恋愛やすれ違いがあっても最終的には律と結婚するんじゃないか、と予想する人もいたかもしれない。
ところが、20代の鈴愛はプロの漫画家としてデビューするものの次第に伸び悩むようになり、数年ぶりに再会した律にプロポーズされるもタイミングが悪かったのもあって断る。

やがて鈴愛は才能のなさを悟って漫画家引退、100円均一ショップのアルバイトで出会った映画監督志望の涼次(間宮祥太朗)と結婚し長女を出産。
律も職場で知り合った女性と結婚し長男に恵まれた。
しかしそれぞれの幸せな家庭生活も長くは続かない。
映画監督の夢を捨てられない涼次から一方的に離婚を切り出された鈴愛は、長女を連れて故郷の岐阜に戻った。
祖父の仙吉(中村雅俊)に教わった五平餅を出すカフェを立ち上げるために奮闘したかと思えば、長女が(金のかかるスポーツとして有名な)フィギュアスケートを習いたがったことがきっかけで再び上京するも勤めた会社が倒産した。
鈴愛の半生は、朝ドラらしからぬどんでん返しの連続だ。

ただし鈴愛の持ち味は「アイデア」(星野源が歌う主題歌のタイトルも「アイデア」だが)。
漫画もアイデアだけは良かった。
鈴愛はアイデアを活かして、離婚し会社も退職した律とともに“そよ風扇風機”の開発に乗り出し、アラフォーになっていよいよ幼なじみの二人はキスまで辿りついた。
このドラマに一本筋が通っているとしたら、それは「鈴愛のアイデアに振り回された人間模様」ということになるかもしれない。

さて、鈴愛と北川氏の相似性はここでも出てくる。
北川氏もまた、アイデアの人なのだ。
『半分、青い。』はわざと“朝ドラヒットの法則”を全部外したという彼女。
2010年放送の連続ドラマ『素直になれなくて』(フジテレビ系)でTwitterを利用する男女の物語を書いた際、<私はリサーチしないよ。極力。しても一回。なぜなら、想像の翼を折るから。覚えておいて。こういう人もいることも>と宣言していたが、『半分、青い。』の脚本執筆にあたってもそのスタンスは同様だったようで、Twitterでフォロワーに<みなさんの、バブルの象徴を教えてください。今、そこ書いてます!>等と質問したことがある。

9月21日放送の『あさイチ』にVTR出演し、博多華丸に「(『あさイチ』での華丸の)朝ドラ受けを狙った終わり方にしようとNHKに提案したら却下された。朝だけじゃなく昼も放送してるしBSでもやっているからと。えーなんで~、って」と無邪気にアイデアを語っていた北川氏だが、「なんで」も何もNHK側が「朝ドラは朝だけ放送しているわけじゃない」と正論を示しているのに、なぜゴネるのかが逆にわからない。しかし彼女がそういう思いつきを大事にしたい人であり、脚本にも活かしてきたことは確かだ。

アイデアも大事かもしれないが、それを補強する考証やデータがあって初めて説得力のある作品になるというものだろう。
「リサーチしません」と宣言し自力で作品を生み出そうという胆力はすごいが……。
そんな北川氏のアイデアを散りばめられあちこちに話が飛んだ『半分、青い。』150話では2011年3月に突入、東日本大震災が起こり、鈴愛の親友・ユーコが被災し死亡した。
あの震災を描くこと自体がタブーなわけではないにしろ、果たしてそれを描くことが『半分、青い。』のエンディングに向けて必要だったのか物議を醸している。

現実に起こった大規模災害であり、まだ歴史の一部として風化していない現在進行形の問題。
それをヒロインがショックを受けるためだけの都合のいいネタとして扱っているような雑さが感じられ、嫌悪感を示す視聴者は少なくない。
震災だけでなく、「なぜこのエピソードが必要不可欠だったか」という説得力に欠けるシーンが『半分、青い。』には多かった。
それが視聴者の心を悪い意味で掻き乱した最大の要因かもしれない。